2025年8月中旬、夫とふたりでモンゴルへ行ってきました。
遊牧民のゲルで3泊、馬に乗って出かけて行った先の草原のテントで2泊、ウランバートルのゲストハウスで2泊の、7泊8日旅。
モンゴル🇲🇳へ行って来た
— ヌー : すっきり、さっぱり。 (@like_a_rhino) August 16, 2025
遊牧民のゲルに泊まった
みんなでお金を出し合って羊を丸ごと一頭買って捌いてもらって丸ごと一頭食べた
馬で移動して星空の下でキャンプした
トラックの荷台に乗って川を渡った
巨大チンギス・ハーン像を見た
ウランバートルを散策した
モンゴル、大変面白かった https://t.co/bAChU4ykma pic.twitter.com/Dky35KYg6u
今回の旅行、同じ日程で参加していたツアー同行者の方たち(総勢7名)(全員日本人)との行動が多く、写真等どこまで公開してOKかの見極めがむずかしかったのと、モンゴル旅行での最大の目的だった「乗馬」をしている間は安全上の理由でカメラを使用することができず、馬上からの視点がスマホ写真でしか残せていなかったのとで、全体的にどう記録しておくかを悩んでしまった。
…とうだうだしているうちに記憶が薄れていく一方なので、できる限りで残していきます。
きょうはモンゴル旅行4日目、馬旅キャンプへ出発し、着いたキャンプ地で夫が体調不良(発熱、下痢、吐き気)を起こした日の記録。
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4日目:馬旅キャンプ、夫の体調不良
前夜、ものすごい雨が降った。
夜中にトイレに行きたくなって目が覚めたんだけど、あまりの雨音にとても外に出る気にはなれない。
ゲルには傘がないし、自分もまさかモンゴルでこんなに毎日雨に降られるとは思っていなかったので、折り畳み傘も持ってきていない。
大草原のちいさなトイレまでは、まっくらな草原を5分ほど歩く距離。
…むりー…。
なんとか朝までガマン、と思って寝入ろうとするのだけど、やっぱりどうしても行きたいートイレー。
背に腹は代えられないし、恥も外聞もない。
雨がほんの一瞬弱まった隙にゲルの外へ出て、ゲルのそばでさっとトイレを済ませる。
ゲルへ戻ると、またどしゃーっと雨が降って来る音がした。
ギリギリセーフ…。
翌朝顔を合わせたTさんSさんご夫妻に(すこし自己嫌悪に陥りながら)この話をしたら、「えー!そんなの当たり前でしょー!あんな寒くて大雨のなか絶対ムリ!わたしも夜の間はずっとゲルの横でしちゃってるよー!」とあっけらかんと返ってきて、ちょっと救われた 笑。
そう、ここは草原。
すべてを受け止めてくれる(はず)!
草原散策
おはようございます。

前日の川への散策とは逆方向、丘の方へ行ってみる。

馬たち、いつでも草が食べられるように、夜になると草原に杭を打ってそれぞれ繋がれているらしい。
東側の丘と丘の間に雲が溜まって、雲海になっているのが見えた。

雨に洗われて、草原が秋へとさらに一歩進んだ感じ。





この丘にぽつぽつと見えていた石碑、近寄ってみると墓石だった。
Sheilaさんにその話をし、「土葬なんですか」とたずねると、「土葬と鳥葬があって、どちらで埋葬するかはその人が亡くなった後で偉いお坊さんがそれぞれ決めるのだそうです」と教えてくれた。
鳥葬…!
チベット仏教の地でもあるんだもんな、そうだった。
それにしても、どう埋葬するかを「他人」が決めるというのにもびっくりしたけど、でも、「自分の最期の形態」を自分で決められないというのは、理に適っている気もする。
「自分」って決して全能の存在じゃない、とてもちっぽけなものだもんな。
なにか自分ではないものの力で、生死も、その後のかたちも決められていると思う方が、こころが落ち着くような気がする。
人間は、ちいさい。
朝食
ゲルに戻ると、朝食の用意ができていた。

馬の乳からつくるアイラグ(馬乳酒)もひとくち。
お酒といいつつアルコール度数はとても低く、モンゴルの草原では子どもでも毎日のように飲んでいるものなのだそう。
飲みなれていない日本人はお腹をくだすかもしれず、少量にしておいた方がよいとのことなので、ほんのひと口だけいただく。
ネットで検索すると「カルピスの原液のような」と出てくるけれど、ここで頂いたアイラグは水キムチの漬け汁のようなさわやかな酸味で、わたしはとっても好きな味。
おいしかった!
つづいてSheilaさんが、てづくりのヨーグルトを出してくれる。

牛乳に、種としてヨーグルトを少し加えて置いておくだけでどんどんできるのだそう。
もとの生乳の風味がしっかりと感じられ、酸味が適度でとってもおいしい。
人生イチおいしいヨーグルトかもしれない。
モンゴルの草原では、朝夕に搾った牛の乳をウルムにしたりヨーグルトにしたり、ヨーグルトを水切りしたものを乾燥させ発酵させてチーズにしたり、あますことなく利用しつくすとのこと。
気候風土とともにある、人間の智慧。
すばらしい。
ここでツアー参加者最後のひとり、日本人女性の旅女子Mさんが合流。
TさんSさんご夫婦、モンゴルズモウのIさん、天体観測のKさん、旅女子Mさん、われわれ夫婦の全7名が出そろった。
馬旅キャンプが始まるよー。
わくわく。
昼食&馬旅キャンプへ出発
外はまたぽつぽつと雨が降り出したけれど、トラックの荷台にはどんどん荷物が積み込まれ、馬旅キャンプの準備が着々と進んでいる様子。
ゲルの中で昼食をいただく。

羊肉とちょっとの野菜を炒め煮にしたもの。
ちょっとクセのある肉じゃがみたいな感じ。おいしい。
さて、お腹もいっぱいになったところで、馬旅キャンプへ出発!
雨もあがって太陽が照り付ける中、ひとりずつ馬に乗り、お義兄さんとSheilaさんにガイドされながら東へ向かって歩き出す。
Sheilaさんのご主人とお姉さん、1歳ちゃんは、荷物を満載したトラックで別途走って行ってくれるらしい。
今回の馬旅、この日は30㎞ほど行った場所でテントを張って宿泊し、翌日はそこから15kmほど先にあるGunjin sumという遺跡まで馬で出かけて行きテントへ戻ってもう一泊、最終日はゲルまで30㎞の道を馬で戻る、というもの。
そんなに長い距離と時間、馬に乗っていけるだろうか。
天気は大丈夫だろうか。
川が増水して渡れないなんてことはないだろうか。


ドキドキしながら出発したけれど、山々に挟まれた渓谷に入るころには、馬に揺られながら涙ぐむほどの感動に包まれていた。
なにしろ景色がすばらしい。
突如ゴツゴツした岩肌を見せる山々、ワレモコウやリンドウが咲き乱れる湿地。
さっきまで青かった空が、渓谷に入った途端に暗くなって黒い雲がわき、山から湿り気を帯びた風が吹き下ろしてきて、ドラマティックな不穏さが増していくさまも美しい。
うわーん、美しすぎるー…。
12時半過ぎにゲルを出発して2時間半、やや大きめの川を渡ったところで荷物を積んだトラックや、親戚のおじさんが乗って来たバイクと合流、おやつタイム。

パンをかじり、お茶を飲んでいたら、馬に乗ったグループがたくさんの牛を引き連れつつやってきた。

欧米人らしきガイドに率いられた、欧米人らしき観光客の馬旅ツアー。
こういった遊牧民体験ツアーはあちこちのツアー会社で企画されていて、わたしたちがお世話になっている遊牧民ファミリーも、モンゴル旅行のツアー会社から「遊牧民体験」部分を切り出されて請け負ったりしているという。
なるほどねー。
川べりで温かいお茶を飲んでほっと一息つきながら、みんなそれぞれ、キャンプ地までおしりや膝がもつかどうかを心配している。
男性は女性よりも股関節がかたいので、馬にまたがっている姿勢は骨盤周りへの負担が大きいみたいだし、男性も女性も日本での日常生活ではなかなか経験しない姿勢をずっとキープしていて、膝への加重がキツイ。
Tさんの馬は前日同様抑えきれない勇みっぷりでまた勝手に駆け出してしまったりして、ついに馬がチェンジされることになったし、乗馬の練習期間なくほぼぶっつけ本番でこの馬旅に合流することになったMさんは、馬に乗ること自体への緊張もあって結構お疲れの様子。
一時間ほどの休憩ののち、再出発!
がんばろー!
たのしいね!

遠くに、岩山が見えてきた。



みんな、かっこいいよ。
馬旅キャンプ地に到着
あの岩山の手前の平原が今回のキャンプ地、今日のゴールだって。

川を越えるのも、だいぶ慣れてきた。

そして、ゴール!
増水して渡れなくなっているかもと言われていた川も無事渡れ、おしりも膝も持ちこたえてくれ、みんなここまで来られた!
ここをキャンプ地とする!

遊牧民のみなさんはさっそく草原のどこからか杭を探してきて地面に打ち込み、縄を張って馬をつなぎ、トラックの荷台から荷物を運び出して設営を始める。
わたしたち夫婦、Iさん、Kさん、Mさんの5人が宿泊する大きなテント、TさんSさんご夫婦が宿泊するワンポールテント、Sheilaさんご夫婦のテント、お義兄さん家族のテントが建ち並び、トラックの横にプロパンガスとガス台のオープンエアキッチンがしつらえられ、あっという間にテント村ができあがった。
いやー、遊牧民の機動力、ほんとにすごい!
ちなみに、今回の遊牧民ホームステイ体験の全般的な距離感と位置関係はこんな感じ。

いちばん左下のブックマーク印がモンゴルの観光地として有名な「亀岩」、そのちょっと上が初日にプリウスからトラックに乗り換えたミニスーパーマーケット、そこから東へ行ったところにあるのが宿泊していた遊牧民ゲル、そこから北へ上がってきたのが今回のキャンプ地。
ミニスーパーマーケットからゲルまでが、車で1時間弱。
ゲルからキャンプ地が、ポクポク馬旅で4時間ほど。
すごくすごく遠い所まで来ている感覚なのに、地図上で見るとモンゴル全土のうちのほんとにほんとにちょびっとの線でしかなくて、愕然とする。
人間って、人間のいとなみって、ちいさい…。
もちろん、初心者がポクポク歩いて4時間なのであって、遊牧民がマジで馬を走らせて草原を駆け抜け山を越え川を渡ったらあっという間の距離なんだろうなと思うし、だからこそ「モンゴル帝国と騎馬民族、ハンパない……!!!」と体感を伴って実感できた。
モンゴルへ来た甲斐がある。最高だ。
馬旅キャンプ地で野点&呈茶
キャンプ地で野点セットを広げ、一服。

お茶菓子は琥珀糖と、たねやの和三盆『夏の詩』。
金魚と枝豆と波のかたちがかわいい。
もうさ、ほんとうにこれがしたかったのよ!草原でいただくお茶!おいしい!うれしい!

Sheilaさん、ツアー参加者のみなさんにも一服ずつ差し上げられた。満足。




夕食&夫の体調不良
日が暮れてくるにつれて、どんどん寒くなってくる。

夫はキャンプ地に着いて早々、「なんかすごく眠いから寝るね」と言って寝袋に潜り込み、それ以来いちども出てきていない。
夕食をいただくよーと声を掛けに行くと、うーんと気怠い返事のあと、「なんか熱があるっぽい…」と。
額に手を当てると、確かにぼこぼこに熱さを感じる。
疲れ?食あたり水あたり?なんらかの感染症?
とりあえず解熱剤を飲むというので白湯で飲ませる。
マスクは着けているけど、みんなと同じテントでいいんだろうか。
この先悪化していくようだったら、どうしたらいいんだろうか。
とりあえず持ってきた常備薬の袋をひっつかみ、Sheilaさんに声をかける。
「熱があるみたいで、だるいのと、食事は摂れそうもないっぽくて」と伝えると、すぐに手元の常備薬を見て「コレとコレは飲んでみてもいいと思います」と返ってきた。
あとから聞くところによると、Sheilaさん医療従事者でいらっしゃったらしい。
なんと心強過ぎる…!ありがたい…!

Sheilaさんから夫の状態をきいたお姉さん、「モンゴルで風邪を引いたら飲むスープ」と手早くスープを作って出してくれた。
これがニンニクたっっっぷりの、どこからどう見ても滋養にあふれまくったスープ。
結局、夫はまったく食欲がなくて食べられなかったのだけど、ほんとうにあたたかい心遣いと、モンゴルの遊牧民のからだの強さとその源に触れさせてもらった感じがする。
星空観察&就寝
保温ポットに白湯を足してもらい、夫の枕元へ。
この日もペルセウス座流星群観測日。
天体観測好きのKさんは四分儀?六分儀?の大きな機材を持ってきていて、それを組みあげてシャッターチャンスを狙っている。ガチ。
みんなで草原に立ち星空を見上げていると、それぞれ勝手気ままに向いている方向にそれぞれたまーに流れ星が流れ、「あ!流れた!」の喜びの声と、「えー!そっち見てればよかったー!」の悔しがる声とが行き交う。
この日も月は明るく、雲も多くて星空観察に最適な環境ではなかったけど、それでもみんなそれぞれに流れ星を観測でき、満足気。
ひとあし先にテントへ戻り、夫に声を掛けると、寝袋から熱であつくなった手を出し、わたしの手を握って来る。
めずらしい…。
夫の心細さと不安さが伝わって来る。
テントの外からは、空いっぱいの星空を楽しむKさんIさんMさんの明るい笑い声。
どうかどうか、何事もありませんように。
だいじょうぶでありますように。
おやすみなさい。
